リクルーティングコラム
新しく採用した社員が早期退職する理由のひとつに「採用のミスマッチ」が挙げられます。
入社前に聞いた情報と実際の職場環境や社内制度などが異なり、会社と新入社員との間で「その会社で働く意欲のギャップ」が生じた結果、採用のミスマッチとなるのです。
この記事では、 採用のミスマッチが起こる具体的な原因に触れながら、採用のミスマッチをどうしたら防ぐことができるのかを紹介します。
このコラムの目次
【最新】採用ミスマッチの実態|早期離職者・離職者の推移
「採用のミスマッチがなぜ起こるのか」について触れる前に、採用におけるミスマッチの実態がどのような状況なのかを、採用市場のデータを踏まえながらみていきましょう。
《最新版》早期離職者の推移
早期離職とは、一般的に採用し就職した社員が3年以内に辞職してしまうことを指します。
2023年の8月に厚生労働省によって発表された「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、入職前の1年間に就業経験のない「未就業入職者」そして入職前1年間に就業経験のある「転職入職者」のそれぞれの離職率が令和4年度は9.7%、8.5%でした。
一方で前年度の令和3年の離職率は、それぞれ8.7%、5.2%となっています。
2021年の厚生労働省の発表によると、2021年の新卒入職者の3年以内の離職率は30%を超えており、特に新卒での入職者の離職率は、高卒・大卒ともに30%以上と同年の平均離職率と比較しても2倍以上と高い傾向です。
ここ10年間は依然として3割以上の数値となっています。
《最新版》平均離職者の推移
同様に、厚生労働省によって発表された「令和4年雇用動向調査結果の概況」では、2022年の離職率は15.0%でした。
しかし、2022年度の入職率が15.2%と離職率15.0%と比べても、ほとんど差は縮まっており、離職率自体は下がってきているものの、直近3年(2019年~2022年)は入職率と離職率の差がほとんど同程度の数値になってきています。
業界によっても異なりますが「宿泊業,飲食サービス業」が 34.6%で離職率が最も高く、その次に「生活関連サービス業,娯楽業」が 23.2%となっているのです。
よくある離職理由と採用ミスマッチが起こる原因
採用した社員の早期離職は、企業の採用担当者には悩みの種でしょう。
しかし採用した社員が早期離脱してしまうのには、理由があることがほとんどです。
早期離脱してしまう原因を事前に把握しておくことで、採用時の面接や内定後の研修などに生かし、早期離脱を防ぐことができるでしょう。
ここでは、早期離脱においてよくある理由を5つ上げ、詳しく紹介します。
早期離職でよくある5つの理由
労働時間・労働環境など条件が悪かった
転職クチコミサイトの「転職会議」が行った調査によると、労働環境が理由で離職した人は47%と第2位の数値でした。
20代や30代の若い世代でも、長時間の労働や労働内容に体力の限界を感じる人が多いようです。
労働時間の改善や、休日や休暇を社員が取れる仕組みづくりが早期離職を防ぐために重要な手段と言えるでしょう。
職場の人間関係が好ましくなかった
社内での人間関係もまた早期離職の大きな要因で、転職クチコミサイトの「転職会議」が行った調査では53%と最も高い割合でした。
具体的には上司や先輩との人間関係が良くないことや、周りに相談、フォローできる人がいないといった理由が多いようです。
周囲からのフォローがないため、社員が「会社に居場所がない」と感じたり「孤立している」と感じたりしてしまうと、ストレスを感じ離職につながる可能性があります。
内定や就職の前段階で、仕事の責任が伴うことやチーム体制などもしっかりと伝えておくことが重要です。
給与などの収入が少なかった
給与や賞与の待遇面での離職は、労働時間・労働環境、そして職場の人間関係に次いで多い要因です。
厚生労働省の令和4年度発表「一般労働者の賃金」によると、令和4年度の平均月額賃金は約32万円でした。
直近10年間で、平均月額賃金はほぼ横ばいであるため、なかなか賃金が増えずに不満を抱えている人もいるでしょう。
もともとの基本給が低かったり、残業代がカットされている、もしくは見なし残業代の割合が多いなど、労働に対する報酬が低い、正当な金額がもらえていないと感じる人が多いようです。
仕事内容にやりがいを感じられなかった
業務内容のやりがいを見いだせない場合、社員のモチベーションが下がってしまい、離職につながることがあります。
社員のモチベーションが下がったまま業務を行い続けると、ストレスや過労などが溜まってしまい、精神・健康面に大きな負荷がかかってしまう可能性があるでしょう。
特に20代の若手の社員が、仕事の内容に楽しさややりがいを持てなくなってしまった場合、仕事や会社自体への興味関心の低下につながりかねません。
その結果として、早期での離職につながってしまう恐れがあります。
将来性に不安を感じた
企業に対する将来性への不安を感じ、離職につながるケースもあるようです。
入社後の自身のキャリア形成や生活面といった社員自身の不安や、企業の商材やサービスに対する不信などが、主な要因として挙げられます。
社員のなかに「この企業で働き続けて良いのだろうか?」、「もっと良い企業があるのではないか?」といった疑問や不安がうまれると、早期離職につながりやすくなるのです。
採用ミスマッチが起こる原因
採用においてミスマッチが起こる理由としては主に、入社前と入社後で社員が感じるギャップが大きいことが挙げられます。
ギャップが大きければ大きいほど、離職につながる確率が高まるでしょう。
ここでは、入社前と入社後のギャップでよくある項目を紹介します。
求める人物像が不明確
採用のミスマッチが起きてしまう要因のひとつに、求めている人物像が不明確あるいは不透明ということがあります。
採用するにあたって「どのような人物を求めているのか」が明確でないため、漠然と募集を行っている可能性があるのです。
「どのような人物を求めているのか」が漠然としたまま募集したケースでは、雇用したい人物像がはっきりしていないため、戦略的に採用計画を立てていない傾向にあります。
雇用したい人物像が確立できていないため、選考基準も漠然としていることが採用のミスマッチが発生する要因です。
求人を行う際には、あらかじめどのような人物を採用したいかを明確にしましょう。
企業側の情報提供が不十分
人材を募集している企業は多くの情報を開示していると思っていても、求職者側からみると必要な情報が少ないと感じていることもあるかもしれません。
会社の経営理念や社風はもちろんのこと、実際に配属される仕事内容や職場の雰囲気や人間関係なども、求職者にとっては重要な情報です。
求職者にとって「どのような企業で、どのような仕事をするのか」がわからない状態では、書面上に記載されている仕事内容だけで判断せざるをえません。
そのため、せっかく入社しても「思っていた環境と違う」と感じてしまい、早期離職につながるケースがあるのです。
会社のホームページや求人情報以外にも、求職者と情報交換する機会を増やし、求職者と企業との認識のズレを解消しましょう。
求職者側の情報が不十分
企業側が求職者に関する情報を十分に得られなかったことによってミスマッチが起こる場合もあります。
応募者にもさまざまな能力や経験があるため、自社に対する適性を正確に判断しなければなりません。
しかし資格や経歴・年齢などの部分だけで判断してしまうと、採用のミスマッチが起きる原因となるのです。
「有名な大学出身だから」「前職では有名企業に勤めていたから」といった先入観で判断してしまうと、応募者本来の人柄や企業との適正を判断できなくなるため、結果的に離職してしまうケースが少なくありません。
面接の際、履歴書や職務経歴書の内容に対して深掘りする質問を行い、求職者への理解を深めた上で採用の可否を判断しましょう。
活躍イメージの不一致
活躍のイメージとは、「この企業に入ったらこんなスキルが身につく」、「裁量権があってやりがいを感じられる」といった、求職者側が入社前に抱いている自身の将来のキャリア形成の道筋です。
<しかし、求職者が抱いている活躍のイメージが入社後の業務内容や労働環境と一致しないと、入社後の仕事へのやりがいやモチベーションの低下、会社への不信感につながってしまう恐れがあります。
会社への不満や自身の今後のキャリア形成のためにも、転職を考えることが増え、離職につながってしまう可能性があるのです。
内定・入社後のフォロー不足
入社が確定した候補者に対して、内定後や入社後のフォローが不足していたために、企業で働くことに不安を感じたり、認識のずれがあったりすると、早期退職の原因になります。
入社までの間で少しでも自社に対する認識のずれがあれば、そのずれを埋めておくことが大切です。
例えば人事担当者からこまめに連絡して相談しやすい雰囲気をつくったり、入社後に配属されるチームのメンバーと交流する機会を設けたりするなどが考えられます。
入社後にも定期的に人事担当者との面談の機会を設け、困っていることや不安なことはないか、随時ヒアリングするといいでしょう。
特に中途採用者では、前職との社風の違いにストレスを抱えている可能性があるため、「前の職場と比べてどうか」「今までの違うやり方に慣れたか」といった新卒採用者とは異なる視点でのケアが必要です。
採用ミスマッチによるデメリット
生産性の低下
採用のミスマッチが起きてしまうと、早期離職までいかずとも「業務に対する理解が乏しい」「やる気が見られない」といった仕事に対するモチベーション不足による生産性の低下につながる可能性があります。
入社後に仕事内容に不満を持ち続けたままでいると、社員の企業への信頼感は上がりません。
仕事に対するモチベーションが下がり、企業と従業員との間での信頼関係(エンゲージメント)の向上が見込めなければ、企業にとってはマイナスです。
生産性が低下したまま改善されない状況が続いてしまうと、人が抜けた分の穴を埋めるために従業員への負担が増え続けるばかりか、生産性の低下にもつながってしまうでしょう。
自社の課題を真剣に考えて主体的に行動してくれる人材を育てるためにも、採用のミスマッチが起こった段階で、社員へのヒアリングや他部門への応援要請といったフォローなど何らかの対策を取る必要があるのです。
現場のモチベーション低下
社員の定着率や生産性の低下は、ミスマッチしてしまった社員だけではなく、周辺社員にまで影響が広がるリスクがあります。
現場社員全体のモチベーション低下につながってしまうと、全体的な生産性の低下だけでなく、転属や離職といった思いもよらぬ損失が出てしまうこともあるのです。
例えば社員の1人が早期離職してしまうことで、ほかの社員の負担が一時的に増加してしまうかもしれません。
社員の1人の早期離職がきっかけとなり現場のモチベーションが低下し、次々と周りの社員まで退職してしまうようなこともあるため、企業にとって大きな損失につながるリスクがあります。
無駄な採用コストの発生
採用のミスマッチを抱えた人材がいると、早期離職者が発生して新たに採用を行わなければならず、無駄なコストが増える可能性が出てきます。
採用コストが増えることを懸念して早期退職した社員が抜けた人材の穴を放置すると、穴埋め作業はほかの社員がしなければならないため、現場全体の負担増につながりかねません。
手間やコストをかけて行った採用活動を無駄にしないよう、面接などの場では慎重に求職者との雇用条件や業務内容についての相互理解に努め、密に応募者とコミュニケーションを重ねることが重要です。
採用ミスマッチ対策≪採用・選考・アフターフォロー≫
《採用》リアルな企業情報を開示する
入社前と後のギャップや採用のミスマッチを防ぐためにも、採用の段階で企業のリアルな情報を求職者側に伝え、把握してもらうことが重要となります。
会社のサービスや商材、裁量権などの良い面ばかりを伝え、整っていない部分や責任の大きさ、組織・体制などの悪い面を伝えずにいると、入社後のギャップにつながる可能性があるでしょう。
そのため、求職者側には自社で働くメリットとデメリットを伝え、求職者側に入社後に求める責任やスキルなどを事前に共有することが大切です。
企業のリアルな情報を求職者側に共有する方法の1つに、採用サイトを活用することが挙げられます。
実際に現場で働く先輩の社員や経営陣のインタビューにより、仕事のやりがいや自社で働く良さ、自社の仕事の大変な面を生の声で伝えることが可能です。
会社の歴史では、会社の良い点や逆に苦労している、してきた情報を開示することで、事前に求職者に伝えられる情報が増えるでしょう。
《採用》リファラル採用を導入する
リファラル採用とは、自社の社員から紹介や推薦を受けて実施する採用活動のことです。
社員のつながりを利用して、質が高く自社に合った人材を確保できます。
自社社員から詳細な社内情報の提供を受けた上で応募してもらえるため、ミスマッチが生じる可能性が低くなる採用方法です。
《採用》インターンシップを実施する
実際の社内の雰囲気や社員の働き方を本当に知ってもらうために、体験型入社やインターンシップを導入する方法があります。
求職者に実際の業務に従事してもらったり、社員と接してもらったりすることで、会社で実際に働くイメージを持ってもらうことが可能です。
会社側としては「どの社員と相性が良いのか」、「どのような業務と相性が良さそうか」、「逆に相性の悪い社員や業務はどれか」などを確認することができます。
《選考》RJP理論を活用する
RJPとはRealistic Job Previewの英単語の頭文字をとったもので「現実的な仕事情報の事前開示」という意味になり、この採用理論を利用した情報開示が、会社の誠意ある情報開示として効果的とされています。
「完全週休2日」「月間の残業時間20時間程度」といった情報を事前に開示することで、求職者にはメリットとデメリットを天秤にかける選択肢が生まれ、ある程度のデメリットを受け入れるつもりの求職者が応募してくるため、結果的にミスマッチが生じにくくなるでしょう。
《選考》構造化面接を実施する
構造化面接とは、あらかじめ定めた評価基準や質問項目に沿って面接を進める手法を指します。
定めた評価基準や質問項目に沿って候補者を評価することで、面接官の主観や評価のバラつきを防ぎ、公正・公平な採用面接が行えるのが特徴です。
求める人物像や必要としているスキルなどを基準として用意し、それに沿った質問をしながら面接をしていくため「せっかく採用したのに、思ったようなパフォーマンスを出せる人ではなかった」といったミスマッチの発生を抑えられます。
《選考》適性検査を導入する
履歴書や職務経歴書以外の人物像や考え方といった要素を検証するために、適性検査を導入する方法があります。
適性検査を受けた人の素質や考え方を判定し診断できるため、目に見えにくいストレス耐性や組織適正なども見極めることが可能です。
適性テストの結果をもとに面接を行なうと、より深く人物について知ることができます。
《アフターフォロー》体験入社
内定を出した求職者に対して体験入社してもらう方法も、採用のミスマッチを防ぐ手法のひとつです。
体験入社とは名前の通り短期間、会社で働いてもらうことを指し、入社前と入社後のギャップをなくす点では、1番効果的な方法といえるでしょう。
短い期間であっても、仕事をするうえで不可欠な職場環境を把握することで、入社後のミスマッチを減らすことができます。
《アフターフォロー》オリエンテーション
入社してすぐ仕事をさせるのではなく、会社の全体像やビジョン、どんな社員がいるのかを知るために、オリエンテーションや自社についての研修を実施しましょう。
会社が目指す方向や数年後に自社で経験できる事業、働くことで成長できることの情報をオリエンテーションを通して知ってもらうことで、会社への帰属意識が芽生えやすくなり早期退職を防ぐことが期待できます。
《アフターフォロー》メンター制度
メンター制度とは直属の上司とは別に年齢の近い年上の先輩社員や、社歴が近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポートする制度です。
メンター制度を通して新人社員が自身のキャリアや成功体験、失敗経験などを棚卸しするきっかけとなり、自主的に仕事に取り組み責任感を持つことが期待できます。
結果的に業務に対して自信がつき、早期退職を防ぐことができるでしょう。
まとめ
求職者とのミスマッチを防ぐには、自社と求職者との間に認識のズレを生じさせないことが重要です。
会社のメリットだけでなく、残業時間や業務内容といったデメリットになりうる情報も伝えることで、入社後に「話と違う」事態が起こりにくくなります。
採用のミスマッチを防ぐために、採用サイトを作成し、企業のリアルな情報を求職者に伝えることが得策といえるでしょう。
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※この記事は、2023年11月現在の情報を元に作成しております。