リクルーティングコラム
企業の業務を円滑に進めるためには、事業拡大や欠員が出たタイミングなどで人材を補充する必要があります。
しかし、担当者にとって中途採用者の選考方法や給与額の決め方など悩むことも多いでしょう。
そこで、中途採用を行うにあたり不安に感じている採用担当者に向けて、中途採用のメリットとデメリット、募集時のポイントや注意点について解説します。
中途採用の特徴
そもそも中途採用とは、これまでに働いた経験がある人を企業が雇用することを言います。
簡潔に説明すると「新卒採用以外の人材採用はすべて中途採用」となり、必要な時期に必要な人材を募集する採用方法です。
中途採用を行うには、自社とのマッチングを重視する以外に対象者の特徴を知るのも大切です。
対象者の属性や思考を具体的にイメージできると、適切なアプローチ方法も見えてきます。
1.現状に不満を抱えている・経験が少ない
転職を考えている人の状況は個人差こそあるものの、多くは何らかの不満を抱えています。
在職中であれば働く環境や待遇面などが挙げられますし、無職なら現状の不満とともに将来への不安もあるでしょう。
このような状況に陥っている若者世代の場合は、若手・第二新卒採用として、新卒採用に近い育成型の中途採用として募集します。
また、まだ社会人としての素養が身についていない人の場合は、まずは補助的労働力として雇用するという方法もあります。
2.社会人としての経験がある
既に社会人として働いてきた経験がある人は、基本的なビジネスマナーは身についているでしょう。
入社後のポジションやキャリアプランなど具体的な話がしやすいのも特徴です。
一定の社会人経験者を募るなら、即戦力型のキャリア採用のほか、若手・第二新卒採用などのアプローチが適しているでしょう。
3.これまでの実績を確認できる
企業で活躍し実績を上げてきた人が転職を考える場合、現状よりも充実した待遇を求めていたり、やりがいのある職場で働きたいと考えていたりするものです。
明確な実績を確認できる人材の中途採用を目指すなら、経験重視型の即戦力型のキャリア採用やシニア採用がおすすめです。
4.自社と競合を比較している
転職活動をする際は、複数企業を比較検討して応募先を絞り込むのが一般的です。
比較する要素は、主に仕事内容や給与、雇用形態、休日などが挙げられます。
ライバル企業に優秀な人材を奪われないためにも、まずは競合他社の求人募集を確認しましょう。
そのうえで、転職希望者のニーズに合わせたアプローチ方法を検討する必要があります。
新卒と中途採用の違い
人材採用においては、新卒と中途採用枠は以下のようなメリットとデメリットがあります。
ひとつずつ見ていきましょう。
新卒のメリット・デメリット
【メリット】
・愛社精神が育まれる初めての就職になる新卒社員ですから、自社の理念や文化を迷いなく受け入れてくれることが想定できます。
自社への理解が深まり、愛社精神をもった社員に成長してくれるでしょう。
・組織の活性化企業の人材がずっと変わらずにいるとマンネリ化してしまうというのはよくある話です。
マンネリ化により仕事がだらけてしまい、組織力の低下から業績ダウンにつながるおそれもあるでしょう。
しかし、新卒社員の採用により新しい風が組織に吹き込み、組織を活性化できます。
既存社員は新人教育のために気を引き締めて業務に臨み、新卒社員に仕事を教えながら自身も成長していくなど、組織全体に向上心が生まれやすくなるのです。
・入社研修の効率化新人教育にかかるコストは未来への投資とはいえ、できるだけ抑えたいのが企業の本音ではないでしょうか。
新卒社員は入社時期が同じであるため、入社後に行われる研修を効率化できます。
企業規模が大きいほど研修時のコスト削減効果は大きいでしょう。
【デメリット】
・選考フローが長い新卒社員の採用は、3月の広報開始から6月の選考活動を経て10月に解禁を迎える内定へと進む流れが一般的で、半年以上の期間を費やします。
しかも、より良い人材を確保するには、自社に興味や関心を抱いている学生をできるだけ早いタイミングで集めなければなりません。
つまり、広報開始となる3月前から母集団形成のために動き出さなければ、思うような人材の確保が難しくなる可能性があります。
・入社後の教育に時間がかかる新卒社員は入社後に企業研修を行い、それから徐々に仕事を学んでいくのが一般的です。
はじめから戦力として活躍できるわけではなく、社会人としてのマナーや取り扱う商品やサービスを知る段階からスタートするため、教育には相応の時間を要するでしょう。
・早期退職のおそれ学生から社会人になると、さまざまな年代の人と関わったり社会人としてのマナーを要求されたりするなど環境が大きく変わります。
環境の変化はどのような職場で働いてもあることなのですが、人によっては「この職場と自分は合わない」と捉えてしまい、早期退職につながるおそれもあります。
・ブランド力のない企業は不利新卒採用は企業が学生を選考するのはもちろんですが、学生も企業を選んで応募します。
学生に選ばれるだけのブランド力が企業になければ応募には至りません。
優秀な人材確保のために、各企業は新卒採用に力を入れています。
ブランド力を活かした戦略を立てられる企業ほど採用活動を有利に進められるでしょう。
中途採用のメリット・デメリット
【メリット】
・新たな知識・ノウハウ・人脈などの獲得すでに社会人として経験がある人材を採用することは、その人がこれまで蓄えてきた知識やノウハウ、人脈などの獲得にもつながります。
中途採用した人材が異業種からの入社であれば、自社の新しい仕組みを構築することもできるでしょう。
・即戦力への期待社会人として働いてきた経験があるため、基本的なビジネスマナーはついていると考えられます。
同じ業界から入ってきた人材なら、なおさら即戦力として期待できるでしょう。
ただし、経験者だからといって期待しすぎてしまうとハードルが高くなってしまう点には気をつけたいところです。
・過去の実績に基づいた判断が可能中途採用において、複数の応募者から採用する人材を絞り込む際は、過去の実績が判断材料として役立ちます。
応募者が在籍していた職場にどのような貢献をしてきたのか、どれだけの成績を残してきたのかを比較しながら絞り込めるので、ミスマッチが少なく選考もスムーズに進みやすいでしょう。
即戦力を期待する企業やコアになる人材を欲している企業ほど見逃せない項目と言えます。
・短期間で採用できる転職希望者は自分に合った職場がないか常に探しているものです。自分にマッチしていると思えばすぐに応募してくれる可能性があります。
新卒採用の場合は長い期間を要しますが、中途採用の場合は急に欠員が出たとしても採用までの期間を短くできるのがメリットです。
【デメリット】
・企業文化に馴染めないせっかく転職したものの企業文化に馴染めず、自分がこれまでの仕事で培ってきたやり方を押し通そうとする人もいます。
早期退職につながるおそれもあるので、面接時に柔軟性があるのかを確認し、採用後は適切なフォローができる体制を整える必要があるでしょう。
・若手が育たない可能性社内が中途採用者で溢れかえってしまうと、業務はスムーズに進む一方で若手が入ってこない状態に陥りがちです。
新卒は採用せずに中途採用だけで会社を運営していく方針なら問題ありませんが、社員の若返りを考えているようなら中途採用だけに固執しないほうがいいでしょう。
・早期退職のおそれ中途採用で入社したものの、自社に対して抱いていたイメージと実態が異なっていたため早期退職してしまったというケースもあります。
転職を繰り返してきた人材ほど退職に対して抵抗感をもっていない傾向にあるため、選考時のチェックや自社に関する適切な情報提供が欠かせません。
特に面接の際は相互理解できるように努め、ミスマッチがないように気をつけましょう。
・採用コストが高額になりがち新卒採用に比べて採用コストを抑えられるといわれる中途採用ですが、人材紹介会社への費用や求人広告費なども考慮すると高額になりがちです。
必要に応じて求人広告を見直したり、リファラル採用を導入したりするなどの工夫が求められます。
※あわせて読みたい・採用とは?人事の採用担当が知っておくべき、新卒・中途採用の基本
中途採用の募集で明確にすること
中途採用の募集をする際は、必要な人材のイメージを明確にしたうえで 求人票を作成する必要があります。
ここでは、中途採用の採用計画を立案するうえで明確にすることについて説明します。
1.まず必要な人材をイメージする
採用計画の基本は、必要な人材のイメージを明確にすることです。
いま現在の自社が必要としているのは高いスキルを持った人材なのか、あるいはマンパワーなのかを区別しなければ効果的な人材補強はできません。
ミスマッチを避けるためにも、できるだけ具体的にイメージしましょう。
2.どういった業務を担うのか
採用した人材がどのような業務を担うのかについても事前にイメージしておく必要があります。
必要な人材像と携わる業務をリンクさせてイメージすると、より明確に浮かび上がってくるでしょう。
3.必要な経験と能力はなにか
人材像が浮かび上がった後は、必要な経験やスキルについて明確にします。
未経験でも問題ないのか、資格は必要なのか、経験者が必要であれば何年ぐらいの経験があり、どのような業務をこなせるのかについて設定しましょう。
ただし、細かく設定しすぎると該当する人材が見つからない可能性もあります。
設定する際の参考として、転職市場の状況などもチェックしてみてはいかがでしょうか。
4.入社後のキャリアを想定する
中途採用者が入社後にどんな経験を積んでどのような役職に就くのかを想定しておくことについては賛否がわかれます。
働いていくなかで想定していたキャリアプランが崩れてしまうことはよくあるからです。
とはいえ、採用側が想定したキャリアプランの通りになった場合は、ひとつの成功モデルとして自社の財産になります。
想定外の事態になっても次回以降の中途採用の募集時に活かせるでしょう。
5.募集要項を作成する
募集要項の基本的な項目は、会社概要・雇用形態・職務内容・応募条件・必要資格・給与・福利厚生などです。
他社との差別化を図るなら自社の情報を加えると良いでしょう。
たとえば、中途入社者の声・求める人物像・転勤の有無や条件なども含めると応募者にとってわかりやすく、ミスマッチも少なくなるはずです。
6.給与は自社基準か前職基準か
給与を自社の基準で決める場合は、既に前例があるので難しくないでしょう。
中途採用者の年齢や経験年数と自社の従業員を照らし合わせると客観的に妥当性のある給与額になります。
前職の基準で給与を決める場合は、会社にとって必要な人材だと感じられれば前職の給与額を保証するのが一般的ですが、自社の給与水準と照らし合わせてあまりにも高すぎる場合は妥協できる金額を応募者とすり合わせなければなりません。
一度決めた給与額を上げるのは簡単ですが下げるのは難しいため、給与額について納得してもらえるように十分に説明しましょう。
7.競合の求人と比較する
求人票の作成が完了したら情報の抜けや漏れがないかをチェックします。
求人票のチェックでは、採用担当者自身が応募者の目線に立って客観的に見てみましょう。
そのうえで、競合の求人との比較が重要なポイントです。競合他社の求人が自社よりも魅力的に見えるようであれば、自社への応募が少なくなるおそれがあります。
できる範囲で条件を緩和したり待遇面の向上を測ったりするなどの工夫を行い、採用担当者自身が応募したくなるような求人票の作成を目指しましょう。
未経験者を採用するときの注意点
マンパワー不足の企業においては、未経験者の雇用にも目を向けてみるのも方法です。
実は、未経験者の採用には見逃せないメリットがあります。チェックポイントと併せて見ていきましょう。
1.未経験者募集のメリット
未経験者にまで募集枠を広げることで母集団を拡大できます。
つまり、応募者が増えるぶんだけ自社にマッチした人材を発掘できる可能性も高まるということです。
また、チャレンジ精神が豊富な未経験者を見つけられる可能性もあります。
強い意欲をもって異業種に飛び込んできた人材なら仕事の吸収スピードも早く、自社の欠かせない従業員になってくれるかもしれません。
2.未経験者を評価するポイント
異業種に飛び込んでくる未経験者のタイプとしては、自社に興味関心があるのか、業界に興味関心があるのかに分けられます。
どちらのタイプも評価をするに値しますが、やはり自社に興味関心を抱いてくれた未経験者ほど高評価と言えます。
また、応募者の志望動機を確認する際に、自社や業界について深く調べている未経験者も高評価に値するでしょう。
3.これまでの経験を評価するポイント
自社の属する業界内での就業未経験者を評価する際は、他業種での経験が基礎になります。
単純に勤続年数や職務の経験年数で評価する以外に、前職の業務で上げた実績を評価するのも良いでしょう。
複数社で働いている場合は、職務に一貫性があり矛盾が見られないかという点も評価をする際のポイントになりえます。
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※この記事は2020年7月の情報を元に作成しています。