リクルーティングコラム
社内でのポジションに穴が空いたとき、即戦力となる人材を採用できる中途採用。
しかし中途採用者と企業の間で起こるミスマッチにより、早期退職してしまう可能性があります。
本記事では「どうしてミスマッチが起こるのか」「入社してすぐの退職を防ぐためにはどうしたらいいか」などの疑問に触れていきます。
目次
中途採用におけるミスマッチと求職者を取り巻く状況の変化
そもそもミスマッチとは何なのでしょうか。
また、求職者を取り巻いている状況についてもみていきましょう。
中途採用におけるミスマッチとは?
はじめに、この記事ではミスマッチを「会社・転職者の、お互いに対して抱く期待と現実がズレること」と定義します。
ミスマッチは「早期離職」「内定辞退」「採用人材が即戦力化しない」などの採用における課題を指す言葉としても使われます。
例えば、「転職者のスキル不足」「業務内容・給与の相違」などがミスマッチといえるでしょう。
多くの転職者が入社後に違和感を感じている
中途採用におけるゴールのひとつは、転職者が入社後に即戦力として活躍することです。
中途採用で入社した人たちの早期離職を防ぐためには、入社後にさまざまなフォローが必要です。
しかし、すべての転職者が転職した会社に満足しているわけではなく、一部の転職者は離職して再び転職活動を行うこともあります。
転職者が早期離職する理由として「人間関係の悪さ」「評価・人事制度への不満」「給与の低さ」「拘束時間の長さ」などが挙げられますが、これらの理由から入社後に起こるギャップが早期離職の原因ということがわかります。
転職者が早期離職する問題は、面接で転職者が人間関係や人事制度、給与についてしっかり理解していれば起こらなかった可能性があります。
また、転職経験者の8割以上が、「入社前に聞いていた情報と実態が違う」と感じているようです。
入社後にギャップが生じてしまった原因として上位に挙げられるのが、「入社前の情報不足」「急ぎの決断」「妥協」の3つ。
早期離職につながってしまうギャップの発生を防ぐためにも、企業側は入社前に転職者への情報の提示が必要です。
ミスマッチにおける会社の損失
ミスマッチにより、早期離職や内定辞退などのリスクが生じます。
ではミスマッチによって発生する損失は早期離職や内定辞退の他に、どのような損失があるのでしょうか。
採用に費やした時間・工数が無駄になる
ミスマッチにおける会社の損失の中で、特に「時間が無駄になる」ことが最も会社にとって大きいダメージです。
採用には求人票の作成・掲載、スケジュール調整、選考、入社後のフォローまで、数多くの工数が含まれています。
ミスマッチにより「採用人材が早期離職してしまう」「即戦力化しない」などの問題が起きれば、採用にかけた時間が無駄になってしまうのです。
採用は複数の社員で行うものなので、ミスマッチが起きれば多くの時間が無駄になってしまいます。
業務の時間を削ってまで早期離職する人材を採用することは、会社にとって大きな損失だといえるでしょう。
膨大な損失額が生まれる
採用した人材に入社後すぐに退職されてしまうと、多くの経済的損失が生まれてしまいます。
採用にかかるコストの内訳として、以下のものが挙げられます。
・求人広告費
・人材紹介費
・オフィス職員の人件費
特に、「求人広告費」「人材紹介費」などの、採用活動において社外に支払う経費である外部コストは、社内の従業員を使用する際に必要となる経費の内部コストに比べてひとつひとつの額が大きく、採用コストの割合の大部分を占めています。
このようなさまざまなコストをあわせると、社員一名が入社後3か月で退職した場合、採用経費・在籍費用・教育研修費をあわせて損失額は187.5万円にのぼるというデータがあります。
採用・教育法によってはさらに金額が上がることもあるのです。
これだけの金額が水の泡になってしまうのは、企業にとってもできれば避けたいことでしょう。
中途採用した人材が早期離職してしまうと、採用のためにかけた時間とコストが、会社の莫大な損失となってしまうのです。
既存社員で仕事を埋め合わせなければならない
中途採用を行う理由の1つとして、「空いてしまったポジションの穴埋め」が挙げられます。
中途採用者には即戦力として活躍してもらい、既存社員の負担を軽減することが目的です。
そんな中、中途採用者に早期退職されてしまうと、抜けた穴を既存社員で埋めなければなりません。
既存社員の業務負担が大きくなれば、社員もしくは社内全体のモチベーション低下に繋がります。
場合によっては、モチベーション低下により既存社員のさらなる退職につながってしまうかもしれません。
そうなると、再び空いた穴を埋めるために採用を行わなければいけなくなるため、さらにコストがかかる、という悪循環となってしまうのです。
中途採用でミスマッチが起きる5つの原因
さまざまなリスクが起こりうる中途採用のミスマッチ。
次は、なぜこのようなミスマッチが発生してしまうのか、ミスマッチの5つの原因をご説明いたします。
ターゲットを明確に決めていない
中途採用を行うにあたって、まずはターゲットの明確化が大切です。
ターゲットが明確になっていれば、ターゲットに響く求人広告を掲載でき、求めている人材を獲得できる可能性が高くなります。
反対にターゲットが決まっていない場合は、企業が求めている人材に求人情報が届かなくなり、新しい人材の獲得が難しくなってしまうのです。
特に中途採用では、企業が求めている具体的なスキルや人物像が合っていないとミスマッチに繋がってしまいます。
求めているスキル・人物像以外の人材を採用してしまった場合、企業側からすると採用人材の即戦力としての活躍が見込めませんし、転職者側からしても業務内容が合わず、早期離職してしまう可能性も出てくるでしょう。
採用サイトで正しく情報を伝えられていない
「サイトに掲載されている内容で最も伝えたいことを伝えられていない」「画像が実際の仕事のイメージとずれている」というようなことがミスマッチの原因として挙げられます。
採用サイトは、企業の情報を伝えるための重要な媒体です。
採用サイトで間違った情報を掲載してしまうと、転職者側に誤った情報が伝わってしまい、入社後のミスマッチに繋がります。
2つの例をあげていますので、確認してください。
・若い人材を求めているのに、採用サイトの画像には40・50代の社員しか映っていない
・仕事に打ち込む成長意欲のある人物を求めているのに、福利厚生のことばかり書いてある
このように、ターゲットとずれている情報を掲載してしまうと、ターゲットに「自分にマッチしていない」と思われてしまいます。
転職者がどのような情報を求めているかを想定して、求める人物像に合った情報を載せなければいけません。
面接で転職者を上手く評価できていない
中途採用では、どのようなスキル・経験が必要なのか、どのような性格・人柄が自社に適しているのかを事前に決めておかなければ、面接で適切な選抜ができません。
面接時に転職者のスキルだけで採用・不採用を判断してしまった場合、後に転職者の性格が自社と合わず、早期離職に繋がってしまう場合があります。
事前にどういった人材を求めているかを明確にしておくことで、面接時に自社に合った人材かどうかを適切に評価できるでしょう。
「転職者=即戦力」だと思い込んでいる
中途採用では新卒採用と違い、既に社会人としてスキルや経験を積んだ人材を採用します。
そのため、中途採用で獲得した人材を即戦力として活躍してもらうことを期待するでしょう。
しかし、「転職者はスキルや経験を積んでいるから即戦力になる」と安易に考えてはいけません。
いくら社会人としての経験を積んだ転職者でも、転職先で仕事をするのは初めてであり、不慣れなことです。
スキルが高くても、転職先で仕事をスムーズにこなしていけるようになるには時間がかかるでしょう。
また、新しい環境で周りに馴染めずに力を発揮できない可能性もあります。
転職者全員が即戦力になれるわけではないことを考慮しなければいけません。
転職者を受け入れる環境ができていない
たとえ採用した転職者のスキルやキャリアが申し分ないとしても、企業側が転職者を受け入れる環境ができていないと、ミスマッチが起こる可能性があります。
入社後、転職者に対して研修やフォローを行わない、周りの社員が転職者を迎え入れない、といった環境の不整備がミスマッチの原因となります。
転職者のスキルやキャリアに任せて、研修もなしにいきなり現場に放り込んだり、業務にあたらせたりすると、転職者は混乱して精神的に追い込まれてしまいます。
そのようなことが続くと、転職者は力を発揮できないどころか、離職に繋がってしまうこともあるでしょう。
ミスマッチを起こさない!すぐに実践できる中途採用の5つのポイント
ミスマッチを起こさずに中途採用を行なうためにはどうすればいいでしょうか。
続いては中途採用のコツをご紹介いたします。
求める人材を明確にする
中途採用でミスマッチを起こさないためには、求める人材を明確にすることがとても重要です。
自社がどのような人材を求めているのかを明確にしないまま人材を採用してしまうと、入社後のギャップが起こり、ミスマッチに繋がります。
求めている人材を明確にするために、募集背景から現場にどのような課題があってどのようなスキルを必要としているのかを再考し、さらに深堀りします。
企業が抱えている課題や問題が見えてくれば、どのような人材を獲得すればいいのかが見えてくるでしょう。
ミスマッチを避けるためには、なぜ採用したいのか、という募集背景を確認して、求める人材を明確にする必要があります。
詳しくはこちら【中途採用とは?中途採用の募集方法と給料の決め方、未経験の採用ポイントまで徹底解説!】
選考の目的や流れを具体化する
選考における目的や選考の流れを具体的にすることもミスマッチを防ぐうえでは大切です。
採用目的とは、どのようなニーズがあって、どのようなスキルが必要なのかということです。
この採用目的は経営者と人事担当者が現場の声を集めて決める必要があります。
採用活動の目的はいい人材を獲得することです。
そのため、採用目的を採用活動全体でぶらさないことが大切です。
採用の流れにおいては、以下の3点を押さえておきましょう。
・書類選考を行うのか行わないのか
・面接前後のスケジュールはどうするか
・採用後のフォローはどうするのか
転職者が複数の企業を併願している中途採用で優秀な人材を獲得するためには、スケジュールを事前に決めておき、募集から採用までを素早く行う必要があります。
たとえ優秀な人材を獲得できたとしても、フォロー不足ではすぐに退職してしまう可能性が出てきます。
転職者の選考前から入社後までの流れを事前に具体化しておくことで、優秀な人材を獲得できるだけでなく、ミスマッチも予防できるでしょう。
面接での判断基準を明らかにする
面接では転職者が意図的もしくは無意識的に嘘をつくことがあります。
その嘘を見抜けずに採用してしまうと、入社後にミスマッチが生じてしまいます。
それを防ぐためには、「回答が一貫しているか」「採用要件や基準を満たしているか」といった判断基準を明らかにすることが重要です。
例えば「転職理由」や「将来のビジョン」を確認していくといった具合です。
面接で聞く質問を考える
面接では、判断基準を決めておくことに加え、転職者に対して行う質問を決めておくことも重要です。
ミスマッチを防ぐにはどのような質問がふさわしく、どのような質問は避けた方がいいのかを知っておく必要があります。
いい質問の例
・会社から与えられていた目標はどのようなものなのか
・過去、仕事を通して評価された経験
・どのようなメンバーと仕事をしていたか
・なぜ今転職をしようと考えたのか
・自身の強み
経歴や転職理由など、どの質問をするにあたっても、「何を問いたいのか相手にわかりやすい質問」であることが大切です。
専門用語は使わずに、誰にでもわかる表現にします。
また、相手の温度感を感じながら質問内容を変え、共感しながら聞くことで転職者の本音を引き出しやすくなります。
避けるべき質問の例
避けるべき質問は大きく、以下の2つに分けられます。
・本籍や出身地、家族、生活環境などの本人に責任のない事項
・宗教や支持政党、思想などの本人の自由である事項
このような質問で転職者を判断することで、社会的差別になったり、法律違反となったりするリスクがあります。
面接では、「応募者の基本的人権を尊重する」ことと、「応募者の適正と能力のみを選考の基準にする」ことを心がけておきましょう。
適正・診断テストを実施する
面接に加えて、適正・診断テストを実施することもミスマッチを防ぐうえで効果的です。
適性検査には、ストレス耐性や職業適性を測れる「Cpmpass」、性格や能力を測れる「Tanθ」、知的能力テストやストレス耐性テストがある「ダイヤモンドシリーズ」、基礎能力診断や適性診断がある「アッテル」の4種類があります。
Web形式と紙形式に分かれていることがあるので、適性検査を行う理由に合わせて適性検査を選びましょう。
採用後に退職させないための対策
ミスマッチが起こってしまうと、転職者が入社後に退職してしまう可能性があります。
早期離職を防ぐためには、採用後の転職者に対してどのような対応をすればいいでしょうか。
転職者に寄り添うような接し方を心がける
社員全員が転職者を歓迎してあげることが早期離職を防止することにつながります。
いくら転職者がスキルを持っていたとしても、新しい環境に慣れるまでは時間が必要です。
即戦力として活躍してもらうには社員全員が転職者を迎え入れ、早い時期に会社の文化や組織構造、そして社員個人について理解してもらうことに時間を割きましょう。
働く環境全体について理解してもらうことが、定着率の向上につながります。
不安なことがないか定期的にヒアリングする
新しい職場に入ったばかりの転職者は、やる気にあふれていますが、時間が経つにつれて、今の環境に不満や違和感を持つ人もいるでしょう。
転職者が抱くかもしれない違和感をそのままにしておくとモチベーションが低下し、早期離職に繋がってしまう場合があります。
転職者の早期離職を防ぐためにもヒアリングで転職者の話を聞くことが大切です。
ヒアリングは入社1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後・1年後に行うといいでしょう。
・入社前と現在にギャップが生じていないか
・ストレスは感じていないか
といった質問をし、改善策などを考えて転職者と共有します。
直属の上司以外がヒアリングを行うことで本音を引き出すことができ、より効果的なヒアリングが行えます。
転職者用の研修を実施する
企業文化や理念・役割を理解してもらうためにも、転職者用に研修を用意するのは重要です。
たとえ社会人経験のある転職者とはいえ、新卒採用者と同じように会社の文化や経営理念についてはまだあまりよく理解できていないでしょう。
また、かえって過去の経験が足かせになってしまう可能性もあります。
研修を行うことで、受動的な理解にとどまらず、「自分も組織を作る一員」という意識を芽生えさせることが可能になります。
まとめ
中途採用では企業側と転職者側の間でギャップが生じ、採用のミスマッチが起こる可能性があります。
ミスマッチによる早期離職で莫大な金額が水の泡にならないよう、事前にしっかりと対策をしておくことが大切です。
また、転職者が入社した後も、フォローをしたり、転職者を迎え入れる環境を整えたりすることで定着率も向上するでしょう。
ぜひこの記事に書いてあるポイントを参考にしてみてくださいね。
採用の時点でミスマッチを起こさないためには、以下の2点が重要です。1)採用サイトに情報を充実させて求職者が思っていたのと違ったとならないようにする
2)求人票の表現を工夫して、応募の時点で社風に合わない求職者が応募しないようにする
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※この記事は、2020年12月現在の情報を元に作成しております。