リクルーティングコラム
人材の定着は企業にとって欠かせない課題です。
せっかく優秀な人材や若い人材を雇用しても、定着してくれなければ会社の発展につなげることができません。
そのためには、人材を定着させる取り組みであるリテンションマネジメントが重要です。
この記事では、採用担当者や人事管理部門の担当者に向けて、リテンションマネジメントの重要性と具体的な施策について解説します。
リテンションマネジメントで人材流出に歯止めを
人材の定着は、転職が一般的になった時代において、企業規模にかかわらず大きな課題になっています。
優秀な人材の流出は、企業の業績に多大な影響を及ぼしかねませんし、既存の従業員への悪影響も考えられます。
さらに、失った優秀な人材を補填するために新規に人材をするためのコストもかかるため、企業にとっては大きな痛手になるでしょう。/p>
そこで注目されているのが「優秀な人材を定着させるための取り組み」であるリテンションマネジメント(Retention Management)です。
まずは、リテンションマネジメントの概要と重要性について確認しておきましょう。
リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントのリテンションとは、維持や保持という意味合いがある言葉です。
マーケティング領域では、顧客との関係を維持するための施策としてリテンションマーケティングと呼ばれる手法があります。
人事管理の領域では、従業員と企業が良好な関係性を築き、人材を定着させるための施策としてリテンションマネジメントが注目されるようになりました。
ワークライフバランスを含む職場環境の整備や待遇の改善、福利厚生の改善などがリテンションマネジメントの主な施策であり、従業員満足度を高めるのが目的です。
リテンション対策の重要性
リテンションマネジメントが多くの企業で採用されている背景にあるのは、雇用の流動化です。
働き方の多様性が広く認められるようになり、以前よりも転職しやすい状況になりました。
総務省によると、2019年の転職者数は約351万人で、2002年以降で最も多い数字になっています。
このことからもわかるように、転職に対して抵抗感のない人材が増えていると言えるでしょう。
また、離職率の高い企業の場合、優秀な人材が流出してしまうリスクがあります。
従業員が退職してしまうということは、人材教育のために費やしたコストが無駄になることを意味します。
特に、企業規模が小さくなるほど人材の流出は大きな問題になりかねないので、中小企業では人材の定着率向上が喫緊の課題と言えるでしょう。
とはいえ、離職率や定着率が高いか低いかを判断するのかについて疑問に思う人もいるかもしれません。
離職率や定着率については、厚生労働省が発表している「雇用動向調査」が参考になります。
2018年度の数字では、全産業における離職率は14.6%です。
定着率は離職していない人の割合ですから85.4%になります。
この数字を参考に、以下にある計算方法を使って自社の離職率と定着率を算出してみましょう。
定着率=(入社人数-離職人数)÷入社人数×100
たとえば、ある年度の4月に入社した社員が20名いて、そのうちの6名が3年後の4月までに退職したケースにおける離職率と定着率は以下のように算出されます。
定着率:(20-6)÷20×100=70%
このケースでは、入社後3年の離職率が30%になっているので、平均値の2倍強ですから、早急に効果的な対策を打たなければならないという判断ができます。
ちなみに、全社員に対する離職率を計算する場合は、在職者数の数字を自社の全社員数に置き換えると算出可能です。
自社の実態を把握しておけば効果的な対策を打ちやすくなるので、計算式に当てはめて自社の離職率と定着率を計算してみることをおすすめします。
そして、リテンションマネジメントにより、人材流出を防ぐことができて会社の経営方針や理念を理解して行動できる従業員が増えれば会社の活性化につながるでしょう。
離職率が高い原因を明確にする
離職率が高い企業ほどリテンション施策は重要な課題です。
しかし、効果的なリテンション施策をするためには、まずは離職率が高い原因を明確にしなければなりません。
ここでは、離職率が高い原因を明確にする方法を紹介します。/p>
離職理由は参考にならない
会社から離れていく従業員は、退職する本当の理由を会社に告げるとは限りません。
むしろ本当の理由を伝えずに辞めていく従業員は多いでしょう。
そのため、過去に辞めた従業員の退職理由から効果的なリテンション施策を導き出すことは難しいと考えられます。
また、中途入社希望の人材に対して行う面接では、前職の退職理由を質問する場面がありますが、このときに伝えられる内容も建前であることが多いため参考にはできないと考えるのが無難です。
一般的な退職理由から検討する
では、どうすれば従業員が離職する本音を聞くことができるのでしょうか。
実は、8,000人以上を対象に転職サイトが行った「退職のきっかけ」を調査するアンケートで、離職理由が明らかになっています。
調査結果によると、人材が会社から離れていく理由として一般的なのは「給料が低かった」が最も多く、次いで「やりがい・達成感を感じない」「企業の将来性に疑問を感じた」と続きました。
職務内容のやりがいについては個人差があるため単純な比較が難しいところですが、募集要項を見直せば応募者とのミスマッチを防げるので離職率の低下を期待できます。
また、給与水準は自社と他社の比較を簡単にできるので、見直しをするのは難しくありません。
見直した結果、改善できる余地があるという判断に至った場合は、すぐにでもリテンションマネジメントに取り組みましょう。
定着している社員から聞き取り調査する
従業員が離職してしまう原因を探るには、定着している社員に対して働き方の満足度に関するアンケートを使って聞き取り調査をするのも効果的です。
アンケートにより、企業側が想定していなかった不満の声が見つかるケースは少なくありません。
まずは現場の生の声を聞いて不満に感じている部分がわかれば、リテンションマネジメントが一歩前進できたと言えるでしょう。
自社の問題点が明らかになれば、どのように対策を施して改善すればいいのかが見えてきます。
従業員の意見を上手に取り入れられる企業ほど、人材の流出を防げる可能性は高くなると言えるでしょう。
リテンションマネジメントに取り組む
実際にリテンションマネジメントに取り組むとしても、何から手を付けたら良いのかわからない人は多いかもしれません。
ここでは、リテンション施策を成功させるために具体的な方法を紹介します。
一般的なリテンション策
リテンション施策にはいくつもの種類がありますが、効果を期待できるうえに最も導入しやすいのが社内コミュニケーションの改善です。
人材が定着しない企業の場合、コミュニケーションに問題があるケースが想定されるため、効果的な対策になる可能性は高いでしょう。
主に以下のような対策が挙げられます。
従業員の情報を積極的に発信する
社内専用のブログやSNSを立ち上げ、どのような部署にどんな従業員がいるのか、どのような仕事をしていてどんな将来像を描いているのかなど、従業員の人となりがわかる情報の発信は、社内コミュニケーションが活発になりやすい方法です。
また、これまで注目されなかった従業員にスポットライトを当ててみたところ、注目されたことをきっかけに優秀な成績を残せる従業員に成長したという、思わぬ副産物を得られる可能性もあります。
フリーアドレス制を導入する
従業員が自分の席を持たないフリーアドレス制は、他部署の従業員との関わり合いを増やせるきっかけになることからおすすめできる施策です。
また、稼働率の低い席を減らせるのでオフィスのスペースに余裕が持てるほか、打ち合わせがしやすくなり業務効率がアップする効果も期待できます。
メンター制度を導入する
先輩社員が若手社員や新入社員をサポートするメンター制度は、従来の上司と部下という関係性よりもフレンドリーな関係性になりやすく、お互いに積極的なコミュニケーションをとりやすくなります。
仕事を教えられる側が成長するのはもちろん、教える側の成長も期待できるなど、コミュニケーションの活発化以外にもメリットのある施策です。
このように、リテンションマネジメントによりコミュニケーションが活発になれば従業員満足度の向上につながり、人材の定着率向上が期待できます。
一方で、評価制度や勤務体系の見直しもリテンション対策として効果的です。
低い評価を受けた従業員が奮起できる制度を導入する
一般的な評価制度ではランク分けによる評価を用いますが、低い評価を受けた従業員を引き上げるための施策が整っていない企業もあります。
低い評価を受けたことが原因で離職する可能性も少なくないため、評価が低い従業員をサポートする仕組みを構築する必要があるでしょう。
フレックスタイム制を導入する
従業員が出社と退社の時間を自由に選べるフレックスタイム制は、多様化する働き方に対応するためにも効果的です。
従業員の労働時間を管理するコストが増えるのはデメリットと言えますが、従業員満足度が高まりやすい点は見逃せません。
リモートワーク制を導入する
新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワーク制度を導入する企業は増えているといわれています。
従業員の通勤時間の削減やストレスの軽減など、従業員にとってメリットが多い働き方です。
一方で、従業員間のコミュニケーションが希薄になりやすいという課題も抱えているので、打ち合わせにはメール以外にビデオチャットを使用するなど、見える形でのコミュニケーションをとれるような施策も必要でしょう。
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離職原因にあったリテンション施策を導入する
先に紹介した通り、離職原因として多いのは給料が少ないこと、やりがいが感じられないことです。
人材を定着させるためには、これら2つの点を解消できるリテンション施策が求められます。
給与体系の見直しをする
人材の定着を図るためのリテンション施策が給与体系の見直しというのでは、あまりにも打算的だと感じる人もいるかもしれません。
しかし、東京商工リサーチが行った「賃上げに関する調査」によると、給料額をアップさせた企業では、従業員のモチベーションが上がったり、離職率が低下したりするなどの効果が見られました。
特に、資本金1億円未満の企業で高い効果を得られていることから、中小企業における人材定着の方策としては効果を期待できるでしょう。
キャリアアップできる研修制度を導入する
従業員のやりがいを高めるには、給料を上げる以外に成長の機会を与えることも有効です。
業務でどれだけ成果を上げても昇進できる仕組みがない企業では、人材を定着させるのが難しいでしょう。
また、充実した研修制度によりキャリアアップできる仕組みがあれば、従業員満足度の向上につながります。
たとえば、キャリアアップに関する研修やセミナーを誰でも受けられる制度を用意したり、外部のセミナーへの参加費用を企業が負担したりするなどの制度が用意されていれば、従業員満足度が高まりやすくなります。
研修に参加した結果、新たにできることが増えて業務の幅が広がるようになると、従業員自身のモチベーションが向上するでしょう。
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まとめ:人材の定着こそが会社を発展させるカギ
人材が定着せずに離職率が高止まりしているのであれば、社内に多くの改善点があります。
適切なリテンションマネジメントにより離職率を改善できれば、会社をさらに発展できる可能性が高くなるでしょう。
ただし、人材の育成には長期的な視点が必要であり、即効性はあまり期待できません。
そのため、人材を定着させる観点から従業員の育成を行うとともに、優秀な人材の雇用を考える必要があります。
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※この記事は2020年9月現在の情報を元に作成しております。