リクルーティングコラム
中途採用の担当になったときに気になる予算の問題。
誰もが効果的に費用を使いたいと思っているはずですし、できれば予算は抑えたいところです。
しかし、どのようにすれば上手く予算をやりくりできるのかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、中途採用における予算の重要性や、具体的な予算の組み立て方について詳しくご紹介します。
予算の組み立て方がわからないときや、少ない予算で中途採用を成功させたいときなどに、ぜひこの記事の内容を参考にしてくださいね。
採用コストとは
中途採用の担当者になったら、まずは「採用コスト」について正しく理解することが重要です。
ここでは、採用コストの定義とその内訳について詳しくみていきましょう。
採用コストとは
採用コストとは、「会社が人を採用する際にかかる費用」のことを指します。
採用コストには大きく「内部コスト」と「外部コスト」の2つがあります。
「内部コスト」は、採用担当者の人件費や求職者の交通費といった「会社内で使われる費用」のことです。
一方「外部コスト」は、広告掲載費や合同説明会の会場費など「外部に依頼するときに発生する費用」のことを指します。
まずは「内部コスト」と「外部コスト」に分解して、採用コストを大まかに捉えるようにしましょう。
一般的に考えられる採用コストの内容(人材獲得、育成、広告費)
採用コストは、「採用時にどれだけ費用がかかるか」を管理するための数値です。
よって、人材獲得費・人材育成費・広告費それぞれでどのくらいのコストがかかるのかを冷静に見極める必要があります。
実際、採用コストは年々上昇しています。
その背景にあるのが労働人口の減少で、「有効求人倍率(労働者1人あたりの求人数)」が上がっていることが採用コストの高騰につながっています。
求職者の人数よりも求人数のほうが多いため、採用側の競争率が激しくなり、他社よりコストをかけなければ採用できなくなったのです。
しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響で有効求人倍率が減少しました。
働き口が少なくなったことで、求職者の数が求人数に近づいたわけですね。
このように、採用コストは時代背景によって大きく変動するので、常に世の中の動きにアンテナを張っておく必要があります。
なぜ中途採用の費用計算は大切なのか
では、なぜ会社にとって採用コストを管理することが重要なのでしょうか?
次に、費用計算の重要性について改めて確認しておきましょう。
採用コストは会社にとっては費用
採用コストは会社が人を雇用するときに生じる「経費」です。
よって、採用コストが膨らめば膨らむほど会社の支出が増え、自社の首を締めることにつながります。
採用に力を入れるために大きな予算をかけたくなりますが、採用活動時は常に「会社のお金を使っている」という認識を持っておくことが大切です。
中途採用のコストが高くなりやすい理由
先ほどもご紹介しましたが、採用コストには「有効求人倍率」が関係しています。
近年は有効求人倍率が1倍を超えているため、求職者1人につき1件以上の求人があるという状況が続いています。
その結果、求職者の取り合いが起こるため、より求職者の印象に残るような広告を打たなければいけなくなり、広告費が高くなってしまうのです。
また、少子高齢化が進み生産年齢人口が減少したことによる会社の人材不足が大きな問題になっています。
その人材不足を解消するために中途採用に力を入れる会社も少なくありません。
これらの理由から、特に中途採用において採用コストが高くなる傾向があります。
採用手法によって採用費は異なる
先ほど述べたように、採用コストを左右する要素の1つとして「有効求人倍率」が挙げられますが、採用コストに最も影響を与える要素は「採用手法」です。
例えば、人材紹介サービスを利用すると数十万〜数百万円のコストがかかりますが、ハローワークなどの無料媒体に求人掲載すればコストはかかりません。
したがって、企業の規模や用意できる予算、求めている人材などによって打ち出せる採用手法に違いがあるのです。
コストのかかる採用手法とあまりコストのかからない採用手法を把握し、その上で「自社が打てる手法はどれか?」を考えることが重要です。
採用コストにおける平均相場
業務形態や業種によって、採用コストの平均相場は違います。
相場を知り、ぜひ自社の採用コストの決定に役立ててくださいね。
採用活動の種類による採用コストの平均相場
選択する採用手法によって、採用コストの平均相場は大きく異なります。
それぞれの平均相場と特徴を理解し、自社に合った採用手法を選びましょう。
採用方法 | 平均相場 | 特徴 |
ハローワーク |
0円 | ・無料で広告掲載ができる ・地方の求職者に効果的 ・掲載数が多く、求職者に見てもらえない可能性が高い |
求人媒体 |
約20万円〜150万円 (課金形態により異なる) |
・幅広い層の求職者にアプローチできる ・「掲載課金型」「応募課金型」などさまざまな課金形態がある ・自社に合った課金形態を選ばないと無駄なコストが生じる |
合同会社説明会 |
約30万円〜200万円 | ・求職者に直に会社の魅力を伝えることができる ・業種ごとにフェアがある ・準備や当日対応などで時間的、人的コストがかかる |
人材紹介 |
約100万円〜400万円 (採用した人の年収の35%) |
・コストが高い ・会社と求職者のミスマッチが少ない ・少人数の採用の際に効果的 |
待遇による採用コストの平均相場
採用コストは、新卒採用・中卒採用・アルバイトといった雇用形態によっても相場が大きく異なります。
2018年現在での1人あたりの新卒採用コストは60万円〜80万円ほどですが、1人あたりの中途採用コストの平均は約85万円です。
ちなみに、アルバイト・パートの採用コストは1人あたり約5万円といわれています。
予算に応じて採用する人材の待遇を決めることが重要です。
業種による採用コストの平均相場
業種によっても採用コストに大きな差がみられます。
以下の表は、業種ごとの採用者1人あたりの広告費用(2019年現在)を示したものです。
業種によって採用コストに約28万円〜84万円の幅があるため、自社の業種の相場をみて予算を決めるようにしましょう。
業種 | 採用者1人あたりの広告費用 |
---|---|
保育・教育・通訳 | 約83.9万円 |
ITエンジニア | 約63.9万円 |
企画・経営 | 約63.7万円 |
美容・ブライダル・ホテル・交通 | 約60.0万円 |
コンサルタント・金融・不動産専門職 | 約59.6万円 |
建築・土木 | 約59.6万円 |
平均相場から必要な予算を計算する
1人あたりの採用コストは、「採用コストの総額」÷「採用人数」で算出することができます。
採用コストは「内部コスト」と「外部コスト」の合計ですから、まずは「内部コスト」「外部コスト」それぞれいくらかかるのかを計算します。
そして、「内部コスト」と「外部コスト」を合計して採用コストの総額を算出し、それを採用人数で割ったものが1人あたりの採用コストです。
「何人採用すればよいか?」を決める必要がありますが、その際に参考にすべきデータが先ほど紹介した平均相場です。
「同じ業界では相場はいくらなのか?」「他社がどのような手法を使っているのか?」といった情報を収集して、最終的な1人あたりの採用コストを割り出しましょう。
採用予算の組み方
では次に、具体的な予算の組み方について順を追ってみていきましょう。
昨年の採用結果を分析する
まずは、昨年の実績や採用活動を細かく分析し、今年度の方針を策定するところからはじめましょう。
以下の項目についてそれぞれ分析すると、今年度の方針が決めやすくなります。
・セミナー数
・広告費用
・採用人数
・過去数年の予算
昨年までの傾向や採用コストに対する結果を見つめ直して、「今年度の予算はいくらにするか?」「何人採用するか?」を決めていくとよいでしょう。
採用手法を選択する
先ほども紹介したように、会社の規模や特徴によって選ぶべき採用手法は異なります。
それぞれの性質を理解し、適切な採用手法を選択するようにしましょう。
ハローワーク
無料で求人掲載ができるのが最大のメリットで、なかなか採用コストをかける余裕がなくても求人を出すことができます。
また、ハローワークで求人を探している求職者の多くは地方での仕事を探しているので、地元就職狙いに最適な方法だといえるでしょう。
しかし、ハローワークは掲載されている求人数が多いため、求職者に求人を見てもらえない可能性が高いです。
また、掲載できる情報に限りがあるので、求める人材や仕事の魅力を伝えるのが難しいというデメリットがあります。
リファラル採用
リファラル採用とは、社員に友人や知人を紹介してもらって採用する方法です。
社員から自社のことを聞いているため、自社が求めている人材を獲得しやすいのがメリットだといえるでしょう。
また、リファラル採用でのコストは人材を紹介してくれた社員に対するインセンティブのみ(会社によって異なります)のため、採用コストを抑えることができます。
しかし、社員が「この人なら自社で活躍してもらえる」と期待して紹介するため、実際に採用して活躍できなかった場合、社員が責任を感じてしまい、スムーズに採用が進まないこともあります。
よって、リファラル採用は求人媒体や人材紹介で自社が求める人材が得られないときの一時しのぎの手段となりやすく、制度として長続きしない可能性が高い採用手法です。
リファラル採用の制度を定着させるためにも、支払うインセンティブが適切か、紹介した既存社員と採用した求職者へのケア(定期的なヒアリングなど)が十分にできているかを確認するようにしましょう。
採用ホームページ
求職者の多くは、求人サイトだけでなく会社のホームページをチェックして応募します。
よって、自社のホームページ上で求人募集をするのはきわめて有効な手段です。
採用ホームページの最大のメリットは、自社の魅力や求める人材などをわかりやすく求職者に伝えることができるため、採用時のミスマッチが起きにくくなるということです。
また、オリジナリティあふれるホームページにすれば、他社との差別化を図ることもできます。
しかし、実際にはホームページ制作を外注することが多いため、費用面でのコストが高くなりやすいです。
また、ホームページを検索結果に上位に表示させるための対策をしていないと、ターゲットの求職者に見てもらえないというデメリットもあります。
採用コストを決める
今年の予算から中途採用人数を決める
予算には限りがあるため、「その予算内でどれだけの人数を採用できるか」はおのずと決まります。
1人あたりの採用単価の平均相場や、選んだ採用手法の特徴などを整理したうえで、目標とする採用人数を明確にしましょう。
自社内の人材コストを把握する
予算を組み立てる際に注意しなければならないのが、「内部コスト」にいくらかけるかということです。
採用活動時に社員に払うコストも予算に含めなければなりません。
「内部コスト」は可視化しづらいため管理するのが難しいのですが、「誰が何時間採用活動にあたるのか?」「それをふまえて時給換算するといくらになるか?」をあらかじめ決めておけば、「内部コスト」を計算しやすくなります。
「外部コスト」に比べて「内部コスト」は甘く見積もりがちなため要注意です。
中途採用の費用を抑えるポイント
やはり採用コストはできるだけ抑えたいもの。
最後に、「どのようにしたら中途採用の費用を抑えられるのか?」についてご紹介します。
簡単に実践できるポイントもあるため、予算を組み立てるときの参考にしましょう。
中途採用における外部コストを見直す
まずは、昨年までの「外部コスト」に無駄なところがなかったかをチェックしてください。
「最適な求人媒体を利用できていなかった」「間違った情報を出してしまっていた」などの見落としに気づくかもしれません。
また、「ミスマッチを減らすこと」が最も採用コストの削減につながるため、ミスマッチ防止の観点からみても「外部コスト」の見直しは重要です。
外部コストの例 | 見直すポイント |
---|---|
広告費 | ・自社が求めている人材が利用している求人媒体か? ・自社にあった課金形態か? |
求人情報の内容 | ・「自社の魅力」「求める人材像」が明確になっているか? ・採用要件が正しく伝わる内容になっているか? |
社内におけるコストを見直す
今度は「内部コスト」の見直しです。
主に見直す点は「採用活動時に社員に払う人件費」でしょう。
「採用担当者の数は昨年までと同じでもよいのか?」「勤務時間は削減すべきか?」といったように、人件費を「人数」「時間」といった要素に分けて検討することが重要です。
内部コストの例 | 見直すポイント |
---|---|
人件費 | ・採用担当者の数は適切か? ・採用担当者の勤務時間、時給は適切か? |
交通費 | ・求職者の交通費が正確に計算されているか? |
リファラル採用のインセンティブ | ・体系的なインセンティブ制度ができているか? ・紹介社員に適切なインセンティブを支払うことができているか? |
内部コストの採用サイトを見直す方法は詳しくはこちら→【採用サイト】差別化できる4つのコンテンツと魅力的なサイト5選
助成金を活用する
助成金とは、条件を満たせば厚生労働省から支給されるお金のことを指します。
・正社員が1人以上いる
・雇用保険や社会保険を支払っている
・半年以内に会社都合の解雇をしていない
・労務違反をしていない
助成金の中にも種類があり、特に採用に関するものだと「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」という助成金があります。
採用人数が多くなればなるほど、支給される助成金が増えるという仕組みです。
助成金の利用率は全国的に低い傾向にありますが、採用コストの負担を軽減するためにも助成金の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
インターンシップを活用する
多くの企業ではすでに取り入れられていますが、インターンシップを導入するのも1つの手です。
実際の職場や店舗で仕事を体験してもらい、その上で入社したいかどうかを求職者に決めてもらうのがインターンシップ制度です。
会社の雰囲気や実際の仕事内容、自分に合った仕事なのかが事前にわかるので、求職者にとってメリットがあるのはもちろん、ミスマッチを防ぐことができるという点で会社側にもメリットがあります。
しかし、インターンシップを導入するにしても人件費や会場費などがかかります。
「インターンシップを行うために必要な費用」と「インターンシップをすれば防げたはずのミスマッチによる損失額」を比較して、インターンシップを行うべきかを判断してください。
中途採用内定者のフォロー体制を見直す
中途採用で入社したのはいいけれど、会社の理念や雰囲気になじめず、入社してすぐに離職してしまうケースも多くあります。
早期離職は採用コストが無駄になる最大の要因となるため、確実に採用者に定着してもらうことは採用コストの観点で非常に重要だといえるでしょう。
入社後3か月で離職した場合の損失額は、一人あたり約187万円ともいわれています。
そのため、早期離職につながらないように、中途採用内定者のフォロー体制を見直すことが大切です。
具体的には、採用後のカウンセリング(「入社前のイメージと違ったところはないか?」など)や、中途採用内定者を対象とする研修が十分にできているかを確認することがポイントです。
中途採用者だからといって即戦力を期待しすぎるのではなく、フォロー体制を整備して早期離職を未然に防ぐことが重要です。
まとめ
採用活動には大きな費用が伴います。
だからこそ、採用に携わると不安に感じることも多いでしょう。
しかし、採用コストの相場を知り、予算の組み方や費用の抑え方を理解すれば、中途採用に対するプレッシャーが少しは解消されるかもしれません。
この記事に書かれていたポイントを押さえて、中途採用時における予算の組み立てに活かしてくださいね。
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※この記事は、2020年12月現在の情報を元に作成しております。